
時代劇2000 リリアンの旅
written by結城
澪さま
山百合会幹部主演の演劇。
どうしても時代物をやりたい!
という、黄薔薇さまたっての希望で
急遽”シンデレラ”から”水戸黄門”に。
そんなこんなでお芝居の練習は順調に進み
場はクライマックスをむかえていた。
「いい?クライマックス行くわよ!」
今回のお芝居の監督兼俳優の紅薔薇さま。
『はいっ!』
舞台はとある座敷に移り、そのなかで幾人かの人影が酒を酌み交わしあっている。
「越後屋・・・お主もワルよのぉ…」
そう、傍らの人影に語り掛けたのは、悪代官役の柏木さん。
「いえいえ、お代官さまあっての越後屋でございます…
御用の折は何なりと仰せ付けくださいませ…」
そう、返事したのは越後屋祥子さま。
「お代官さまのおかげで伊勢屋も風前の灯火…
さすれば、われわれの商売がうまくいきまする…」
「ふぁっふぁっふぁっ!」
「くっくっくっ…」
そんな彼らから少し離れた辺りに
刀を抱えるようにして柱にもたれかかっているのは、凄腕の用心棒、由乃さん。
ただ一人沈黙を守っている。
BGMとともに、座敷の庭向かいの障子が開き、
ご老公役の祐巳と、その一行が登場する。
「何者だ、貴様っ!」
「なぁに、私は旅の隠居ですよ…
ところで…あくどい商人をとりしまる筈のお代官さまとあろうお方が、
なにゆえこのような場所に……?」
「えーい!!だまれだまれだまれ!!!
この代官、柏木能登守を愚弄するか!?」
「出会え出会え!ものども、この妙な爺ぃをたたっ斬れ!!」
座敷から姿を見せ叫ぶ越後屋と悪代官。
「仕方ありませんな…助さん!格さん!
こらしめてやりなさい!」
その言葉とともに流れ出すBGM…って、あれ…この曲?
ちゃ〜ちゃちゃ〜〜ちゃららら〜ちゃちゃちゃ〜ちゃちゃ〜〜〜
その音楽とともに颯爽と白馬にのって現れたのは黄薔薇さま。
周囲の目が点になる。
どっから湧いてきたんだ、馬。
「代官、柏木能登守…余の顔を見忘れたか…?」
自信満々につぶやく黄薔薇さま。
……あばれん坊将軍だよ…
先週から関東近郊の牧場のパンフ持っておられたり
今朝も姿が見えなくって、なにされてるのかな?とか思ってたら馬の調達してるし…
「江利子…水戸黄門よ…このお芝居……」
疲れた声でつぶやく紅薔薇さま。
「で…でも、正義の味方になって悪代官をやっつける時代劇なんでしょう?」
黄薔薇さま、頬に一筋の汗。
って、最初の会議での発案者なんですけど…黄薔薇さまは…
「くっ…!かくなる上は、厳しく詮議し追って沙汰する!覚悟しておけ!」
そう、高らかに宣言すると悠然と白馬にあぶみをくれ、退場する黄薔薇さま。
なんだったんだ、一体?
「と…とにかく、やっておしまい!」
いまだ硬直している一同の中、
真っ先に復活したのは越後屋役の祥子さま。
そ…そうだ、お芝居中!
「仕方ありませんな…助さん!格さん!
こらしめてやりなさい!」
「はっ!」
答える助さん役の令さま。
って、格さんは…?
再び落ちる沈黙。
「大変です〜っ!」
そういって飛びこんできたのは、風車の弥七役の一年生。
「ラスト直前に舞台裏で格さん(白薔薇さま)とお銀(志摩子さん)が姿を消しちゃったんです!
そしてこんな書置きが」
”格さまと駆け落ちします、さがさないでください”
”格さま”ってか……
……志摩子さんの銀杏拾い…
業者の清掃が入るって聞いてから、ずっとそわそわしてたけど…
でもって、面白がってついてったんでしょうね…どうせ…
白薔薇さまは…。
「あなたたち、一応、探してきてくれる?」
駆け込んで来た一年生に向かって話す紅薔薇さま。
そしてこちらに向かって小さく目配せ。
…気をとりなおして……
「仕方ありませんな…助さん!八兵衛!
こらしめてやりなさい!」
「おやおや、越後屋をこらしめるだって?
そうはさせないよ…」
そう、にこやかに微笑むと、しばらく沈黙を守っていた柏木さんは、越後屋祥子さまの腰の辺りに手を回し、
かなり強引に抱き寄せる。
刹那、
わたしには見えた…祥子様の目がキラリと輝くのを。
「いいかげんになさったらいかがですっ!?」
ドグッ!
鈍い音が周囲に響く。
足の甲をおもいっきし踏みつけられた柏木さんがその場にあっさりと崩れ落ちる。
……祥子さま…味方なのでは……?
…いや、私は”むっ”としたから気持ち良いけど……
「さぁ、ものども!かかれっ!」
『おうっ!!』
悪代官亡き後、指揮をとる祥子さま。
で、やっとながれるBGM。
その他大勢の侍達が切りかかってくるのを
八兵衛は優雅にかわし、そして反撃する、
助さんはさすが本職というべきか。
2度3度剣を交えただけで、確実に倒していく。
こちらがわの人数が激減したせいでわたしも戦わなくちゃならないらしい。
何人かの攻撃をかろうじて杖で受け止め、令さまや紅薔薇さまの援護を待つ。
…どうでもいいけど、紅薔薇さまの八兵衛、やたらと強いし…
かなり数を減らした越後屋側はとりまきに守られながらすこし後退する。
「先生!出番ですぞ!」
「……」
無言でゆらりっと立ちあがったのは剣客大好き、凄腕用心棒由乃さん。
「かかれぃっ!」
越後屋祥子さまの声にいっせいに動き出す越後屋の面々。
剣客由乃さんは、八兵衛紅薔薇さまと切り結び、
こちらでは私をかばいつつ侍達と切り結ぶ、助さん令さま。
ううっ…なんか由乃さんの目…怖いし。
令さまにかばわれてるのが気に入らないんだろうか…?
ぴしっ!
澄んだ音とともに八兵衛の手にした小太刀があらぬ方向に飛び、その場に倒れる八兵衛。
大分、予定外の人数減で芝居すらも展開がおかしくなってる。
が、だれもそんなことを気にしてはいないようだ
アドリブでどこまで行くか、それを楽しみにしているようにしか見えない。
ほぼそれと同時に、令さまも侍達を眠らせ、由乃さんの方を振り向く。
舞台上には4人だけ、
二人はじりじりと距離を狭め、お互いを剣の届く範囲に納めた瞬間、
由乃さんが動いた。
「てい」
ぺしっ!
「くっ…!」
あっさりと由乃さんに斬られ、
よろめき、隅のほうに倒れる令さま。
って、あっさりと斬られるか?
しかも、回り込まれて背中だし……
由乃さんはこちらをみると、不思議そうな顔をしてる私にさらりと言い放つ。
「いつもの事だしね。」
って、ちょっと待て。
なにやってるんだ、普段あんたらは…。
そんな心のツッコミも空しく
じりじりと間を詰めてくる由乃さん
斬りかかってきた由乃さんの剣をなんとか
杖で受け、さばき、そして少し間合いをとる
「せい!」
気合とともに杖をふり、構えなおそうとした祐巳の手から
杖がすっぽぬけた。
べしっ!!
痛そうな音ともに、由乃さんを杖が直撃する。
無論、杖は格闘用にあちこちに柔らかい素材を使ってはいる。
が、おそらく痛かっただろう、あとであやまっとこう…
由乃さんは、よろめき、わざわざ舞台中央から10歩以上もよろめきつつ
すでに倒れている令さまの上におおいかぶさるように、いきおいよく倒れこんだ。
「きゅう」
祐巳は確かに聞いたような気がする。
令さまの声を。
……おもいっきし行ったな…由乃さん。
「くっ!もはやここまでか…、かくなる上はこの私の手で…!」
じりっじりっと、にじりよってくる越後屋祥子さま。
もう、こちらの手元には杖すらも無いのだ
はっきしいってこれはかなりコワい。
…どっちが主人公なのか、それすらも怪しい。
…はっ!
焦る祐巳の脳裏にある考えがひらめく。
印籠!
あれを出せばすべてがおわる。
……ハズなんだけど…
……って、やっぱし格さんいないし…
・
・
・
・
・
あとの事はあまり思い出したくは……
皆、死んだふりしてるんだもん…
紅薔薇さまなんか、わざわざ倒れてる向きをこっそりとかえてまで、
こっちをみてたし…
ちなみに…
なにがなんだかわからないうちに終わった練習だったけど、
本番では台本どおりにすすみ、
『山百合版水戸黄門』は無事に終幕をみた。
後夜祭にて
静かな場所で私は祥子さまと二人っきりになることができた。
すこしお疲れなのか物憂げな雰囲気の祥子さま。
くだらない話をする気にもなれなくって、
私はなにげなく祥子さまの横顔を眺めていた。
遠くから後夜祭の笑いさざめく声が聞こえてくる。
「……祐巳。」
ふっと顔をあげてこちらを見つめる祥子さま。
「は…はい!」
不意のことなので声がうわずってしまう。
「祐巳…この2週間……ごめんね、そしてありがとう…」
「そんな…!私、結局代役さえもできなかったし……」
そんな私の言葉に祥子さまはかぶりを振る。
「いいえ…、あなたとこんな風に過ごせた2週間、
嬉しかったの、でも、あなたを拘束もしてしまったわ…それも事実」
「でも……!」
言葉に詰まった私を軽く手で制して言葉を続ける祥子さま。
「いいの、なにも言わないで……
……ロザリオ…受け取ってもらえるかしら…?」
「…はい。」
祥子さまをまっすぐ見つめかえし私は頷いた。
神聖な二人だけの儀式。
二人を静謐な空気が包みこむ。
「…行きましょうか?」
やがて、そういって立ちあがった祥子の背中にむかって
祐巳は小さくつぶやく。
”ありがとうございます、お姉さま…”
そして、
ふと、なにかを思いついたのか
急にこちらをふりむくお姉さま。
薄暗く、表情はうかがえない。
「あのね…、祐巳。
この間の練習なんだけど…最後での二人きりのシーン…
……とても楽しかったの、また…付き合ってね」
それだけいうと、何事も無かったかのように祥子さまは再び校庭に向かって歩き出した。
その後ろ姿を、
祐巳はがっくりと膝をついて見送るのであった………。
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フォロー…というか、蛇足。
なんか、作風が妙な方向にそれつつある今日この頃。
祥子さまの代役…
その辺りの設定にも微妙なズレがでてしまい、力不足を痛感しています。
前半ですが
描写とかそのあたりが現時点ではうまく書けず
アイデアはあるが、十分に描けない状態…。
書き味が、関西人チックになったのは…
弁解のしようもありませんが…(汗)
ラストシーン…
祐巳がなにをどう付き合うのか…
このあたりは皆様のご想像におまかせします(笑)
前途の多難さを思う祐巳。
そんな雰囲気が出てればいいなぁ…とか思ったりしてます。
ひょっとしたら祐巳は苦労人なのかも…?(笑)
どうやら私の中では祐巳はいぢめられが足りないのか
ラストシーンでは、喜んでついてく・・・そうはならなかった様です。
最後に……、つたない文章に最後までおつきあいいただきありがとうございました。
00.06.16 M.Yuuki
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→神月のありがとうコールッ!
結城さん、ありがとうございます〜!!!
由乃さん素敵過ぎ〜!!あと、銀杏(^^)
良いですねぇ、時代劇は…ふふふ(−W−)
本当にありがとうございました!