由×祐。

 

ある日の午後。薔薇の館で。

祐巳はふと由乃に言った。

「ねぇ、(不必要に大きな声)……キス(不必要に小さな声)って、どういうのが、上手っていうの?」

「はぁ?」

はとが豆鉄砲、というよりはとに豆鉄砲を浴びせ掛けたらスカッドミサイルで迎撃されて

ショックを隠せない某国兵士のような表情で、由乃が祐巳を見た。(もちろんそんな兵士は祐巳は見たことが無い)

「いや、あの、その…」

「あー、分かった。祐巳さん、祥子さまのために勉強しようってのね?」

「……////(真っ赤)」

何の勉強だ、とは聞いてはいけない。

「もー、任せて、祐巳さん。令ちゃんに直伝のを教えてあげる」

「な、何か技みたいね」

というか、令が教える立場である、と言う方が意外である気もするが。

動揺を隠せない祐巳の肩に腕を回して、由乃は他人に聞こえないよう言った。

「で、祥子さまとはどこまで進んでるの?」

「へっ?」

「微妙に二人とも奥手そうなのよね」

「う…まぁ、そうだけど」

お互い、変に緊張してしまって進みようが無いのである。

祐巳にとっては、お姉さまのそばに居られるだけでクラクラもんなのに。

この間は、意識しすぎた祐巳がお姉さまの手にちょっと触れただけで「うひゃ」などと

可愛くない悲鳴をあげてしまい返って怒らせてしまった事があった。

(なんで分かるんだろう、由乃さん…やはりエスパー?)

分からない方が鈍感なのだと言う事実は祐巳にとっては酷であろう。

「まぁ良いわ、よく聞いてね」

「う、うん」

「令ちゃんが言うには、いかに逃がさないかが大切なんだって」

「由乃さん、逃げるの?」

「逃げないわよ。…そうじゃなくてね、離さないって意味」

「ああ…」

由乃がジェスチャーで頭をしっかり抱え込むアクションをする。

どっちかというとキスではなく、ボールを掴んでるような感じだ。

「狙いをつけて、あとはレッツゴーよ」

「……(参考にならない…)」

苦虫を噛み潰したような顔の祐巳。

「……あれ?なに、これじゃ駄目?」

「ごめん、ちょっと…参考に、ならない、かな」

てゆーか君らいつもそんな忙しげなキスしてるんか。

「うーん、祥子さまは、どんな風にするの?」

「えっ、えーと、ふつーに、こう」

「ふつーって?」

思い出しただけでも顔から火が出そうだと言うのに、表現しろとは!

「ふつーに、ちょっと」

「触れて終り?」

「終りって…いや、まぁ…そうかな」

「もう、もどかしいな。祐巳さん、ちょっといい?」

「?」

「女の子には、恥じらいが必要だけど、邪魔をするのも恥じらいなのよ!」

「!」

変に説得力があった。

令さまはそうなのかなと何処かの冷静な一部の脳が考えている。

「実地で実験してみよう、それしかない!」

「はぁ!?」

「あ、フリだけよ?」

「そ、そりゃそうだけど」

由乃は、どうやら令のしているキスは一般的でないと思ったらしい。

キスに一般的もなにもあるのかという気もするが。

 

そうこうしているうちに、練習は始まった。

宝塚のキスシーンのように、ぎりぎりまでちかづいてみる。

由乃がうっすらと目を開けてみると、そこには上気した頬をして必死、一生懸命になっている

祐巳の姿が見えた。

潤んだ唇が妙に艶かしい。

息が顔にかかった。

ふと、由乃は令とのキスとは違うのだろうか、と思った。

いつもはされる側。今日はする側。

まず立場からして違う。

まだかな?と不安になったのか、祐巳が由乃のセーラーの腕をぎゅっと掴んだ。

それが合図。

「………!!!」

由乃の唇にも分かる、令とは違う柔らかさがあった。

ふれたまま、そのまま祐巳は硬直している。

出来事に、脳の処理能力が追いついてないのか、止まっているのだ。

抵抗しないのを確かめてから、由乃は祐巳の背に腕を回した。

そのとき、ついでに祐巳の腕も自分の背に回しておく。

第二段階。

一旦離れて、祐巳を正面から見る。

「ちょ、由乃さん、今、何を…」

真っ赤になって、困っている。

何か面白い、と思って由乃はもう一度、今度は深く祐巳に口付けた。

いつも守られている自分が守っているような不思議な感覚。

祐巳の唇の間から漏れる吐息すら由乃は奪った。

 

何が起こったのか二人にも分からない。

お互いとても大好きな人がいて、その人といつもキスをしているのに。

どうして今、こうして…

抵抗すれば出来たはず。

冗談にしてしまおうとすれば、出来たはず。

なのに…

 

「……ふ……」

どちらの声だろう。

 

「好奇心…かな」

「好奇心?」

「これで上手くなれそうよね、私達」

「う、うん」

何事もなかったフリをする二人。

「祐巳さん、又今度、しようか」

 

……えっ?

 

 

おわり


駄文後書き

あー、なんてモノを…気の迷いとしか思えない……

桂さん秘話を書こうと思ってたのに〜

そんなこんなで、由×祐です。

お互いに本命がちゃんと居ます。

そういう、ちょっとわけ分からない関係を書いてみたくて書いてみました。

なんだかなー。

 

2001.5.12.神月

 

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