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重なり合う時、触れる吐息 (1)

■注意■

このSSは、聖×静です。しかも両思いっつー設定です(^^;さらに甘甘です。石投げちゃいやーん(^^;;;

 

ごうん、ごうん……

観覧車が低い唸りを上げて、ゆっくりと上昇していく。

聖は、丁度正面に座って夕暮れに見入る静の横顔ををぼんやりと見ていた。

 

聖の受験が終わったすぐ後のある冬の日の事。

図書館に向かう道すがら、窓越しに空が見えた。

空は高く澄んでいて、何処までも続いているような気がするような。

薄くかかった雲が、まるで宇宙に続くもやであるかのように見える空。

窓をそっと開けて見ると、冷たい風に混じって、空の気配がする気がする。

広い、広い、時には一人寂しく涙を流すけれど、

いつでもそこにあって、いるだけで心が落ち着く存在。

空から視線を巡らせているうちに、

静は、ふと校舎に向かって歩いてくる聖を見つけた。

「白薔薇さま」

「ああ、静。なんだか久し振りだね。元気だった?」

「はい、おかげさまで。白薔薇さまこそ、今日はどうして学校に?」

「うん、もう受験も終わったし。なんか、暇でさ。つい来ちゃった」

聖はふふ、といつものようにいたずらっぽく笑う。

まだ卒業もしていないのだから、別に来てはいけない事はないだろうが。

そのことを静が指摘すると、聖も「そりゃそうだ」と笑った。

素敵な笑顔だ、と静は思う。この笑顔を向けられているのが自分だけだと言う事実が、

静に至上の喜びを与えてくれる。

 

しばらく世間話があって、聖が言った。

「そうだ、静は、遊園地って好き?」

「え?」

「遊園地。うちの母さんがね、ただ券もらったんだ、二枚。行かない?」

静かの目の前にあるのは聖が示した一見ピースサイン。しかし、どうやらそれは「二枚」という意味らしい。

「私と、白薔薇さまが…ですか?」

「うん。…イヤなら良いけどね」

と言いつつ、静には分かっている。聖は、決して『良い』とは思っていない。

この人は、そうしないと自分を守れないのだから。(ただし、それほど弱い訳でもない。)

拒絶されたり、一人きりになることに人一倍辛い思いを抱く人だから。

「そんなことは…」

そんな事あるはずがない。

「じゃあ、行ってくれる?」

ちょっとだけほっとしたような表情。

「はい、私でよろしければ、喜んで」

「よかった」

聖が静の頭に触れた。髪をなでる感触が伝わってくる。

「……静…」

こんな時の聖の表情はとても切なげだ。静に向けられた視線は、まるで何かを欲しているようにも見える。

静も、聖の目をじっと見詰めた。

「……白薔薇さま」

名前を呼ばれた事ではっとしたらしく、聖はやや照れ隠しのような事を言う。

「静の頭って、気持ち良いね。さらさらだし」

「そうですか?白薔薇さまの頭も、さらさらしてそうですけど」

「さわってみる?」

ほら、もうすっかりさっきまでの表情は消えている。

「遠慮しておきます。また今度にしますね」

「そう、そりゃ残念。…あれ、静、図書館に行くところだったの?」

視線が今度は静が手にした本と書類に向けられている。

静自身も少し忘れかけていたが、そういえばそうだった。

「はい。書類を届けに。ついでにこの本を返して、レポートの資料を探しに行くんです」

「ふうん。じゃ、ついていこうかな」

「はい」

歩き始めた聖を、静かは追う。

二人はいつも、こんな感じで。

「図書館ってさ」

「はい」

「一人でいると、怖くなる時ってない?」

「どうしてですか?」

「うーん、なんて言うのかな。本って、人が魂削って書いてるわけじゃない。

 一人でいると、なんだかそれに押しつぶされそうな気がする」

いるはずのない人のざわめきと、それに混じって聞こえるため息のような、声。

それが、聞こえるような気がすると言う。

静は、確かにそうかもしれないと思う。

「なんとなく、わかるような気がします」

「そう」

沈黙。

特に話題がなければ、無理やり話すことなんてないと思わない?

以前聖が言った言葉が思い出される。

「……静。いつ行こうか」

「え?ああ……そうですね、では、今週の日曜日ではいかがですか?」

「うん、そうだね…その方がいいね」

聖の手がいつの間にか静の手を取って、きゅ、と握った。

 

「ちょっと待っててくださいね、すぐ返してきますから」

図書館に入ると、静はそう言ってカウンターの方に歩いていった。

聖は所在無くて、なんとなくあたりに目をやる。

見えるのは、明らかに受験生な人たち。

どうして家で勉強しないんだろう、と思わないことはないが、

なんとなくその心境も理解できるような気がした。

静は、後ろから見てもやはりまっすぐで、彼女の視線に似ていた。

「お待たせしました、白薔薇さま」

「あ、うん」

「今から書庫に行くんですが…どうですか、白薔薇さまも」

答えはもちろん決まっている。

「行くよ」

 

本のにおいと、聞こえるはずのない(そして実際聞こえない)本からのざわめき。

図書館は、なんとなく時間が止まっているようだ。

フロアには誰もいなかった。どうやら利用客はみんな自習目当てらしい。

かつん、かつんと二人の足音だけがひそかに響く。

静は前もって目的の本に目星をつけてあったらしく、まっすぐに奥の本棚に向かう。

聖はその後に続く。

本棚に手を伸ばす姿。

他人にとってはたいしたことのない一挙一動が、気になって仕方がないのはなぜだろう。

静が聖の視線に気づいてちょっと笑うと、

聖は歩み寄って横から抱きしめた。

「白薔薇さま…あの、本…見つかりましたから」

から…だから?

言葉より多くを語る静の瞳を、聖の視線が射抜いた。

湧き上がってくる「何か」を抑えられなくて、聖は静に口付ける。

息をすることすら忘れて。

 

唇の間から、空気が漏れる。

 

本をしっかりと抱えながらも、静は聖に答える。

そうすることで聖の「何か」をすこしでも満たすことが出来るなら。

でも、とぼんやりと静は考える。

ひょっとしたらそれは言い訳で、私の中にも、「何か」はあるのかもしれない。

 

お互いがお互いを欲したときに起こる……それが。

 

時が止まった図書館の中で、聖と静はお互いの心に永遠を刻み込んでいた。

 

→(2)につづく


言い訳途中編

はい、20000HIT達成記念SSです。(ありがとうございます^^感謝感激です!)

ああッ!「なにこのカップリング」とか思っていませんか!?

なんで白紅じゃないんだ!?そりゃごもっとも!

私もそう思ってます(笑)

きっかけは、マリー夢(マリみて関係の夢の総称)をみたことです。

なぜか聖×静だったのです(^^;;

つーわけで最終的な言い訳は完結してから…それっていつ?(滝汗)

 

2000.5.21.神月

 

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